デブと山登り

デブは坂が嫌いだ。坂が嫌いな場合二つの理由がある。


上り坂が嫌い。

登りはつらい。デブは質量が大きい分。同じ高度を上ってもエネルギーを多く消費する。たとえば50キロの人と100キロのデブでは、単純に考えて倍のエネルギーを消費(仕事が倍)する。

走行抵抗などを考えると、実際は倍以上のエネルギーを必要とする。

しかし、筋力や持久力は、倍なんか無い。下手すると、劣っていることもあり得るのだ。


従って、デブが坂を上るのはかなりきつい仕事になる。ツールドフランスに出場するような選手でも、坂登りが得意な人(クライマーという。クレーマーではない。)は体重が軽い人が多い

上り坂は体重がもろに効いてくるのだ。したがって、上り坂はデブの天敵なのだ。


しかし、個人の趣味趣向というのは様々で、いじめられることに喜びを感じる人もいる。デブの中には上り坂が好きという人も、結構な割合でいることも事実なのだ。驚きである。


デブが坂を上るには、ギア比が低いギアでニジニジと上っていくしかない。あまりややこしいことを考えず、ちゃんと漕いでいれば頂上に着くさと気楽に考えて、じりじりと上るのだ。

シフトダウンも、坂道に入ってきつくなったからシフトダウンではすでに遅い。きつくなる前に坂の角度などからここまで下げるという風にしなくてはならない。早め早めのシフトダウンと遅め遅めのシフトアップを駆使して、一定の負荷で坂を上るのだ。そのために、悪い条件でもシフトが確実な変速機が必要になるのだ。私自身、XTRの変速性能に何度助けられたかわからない。良い変速機は坂ゴケや足つきを回避できる性能を持っているのだ。

値段の高い変速機を入れるのは重量が軽いからではない。きつい状態でも確実に変速できる変速性能が必要だから、大枚をはたいて購入するのである。

私が10%の坂を上るときの速度は、5㎞を切っている。歩く速度とほぼ等しい。5%位では7~8㎞である。このような低速でも一時間も走れば5~6㎞は進む。あきらめないで漕いでいれば、何とか頂上までたどり着くのだ。

また、焦ってペースを上げてはいけない。あくまでも足に入れる力は一定で、坂がきついところはすごく遅く、そうでもないところは遅く走ればいい。ペースを上げてしまうと、足に乳酸がたまり、本当に動かなくなる。どの程度の力でどの程度の時間こぎ続けられるかは、平地できちんと把握することが必要だ。平地なら足が回らなくなっても何とか生還できるが、坂道で足が動かなく(足が売り切れるとも言う)なってしまったら、万事休すなのだ。また、無理をすると膝や股関節も壊しやすい。筋肉がきちんとついていない時点で過大な出力を出すと関節を痛めてしまい易いのだ。


熊に追いかけられているわけでもないし、会議に遅れそうなわけでもない。日没が近いときは多少焦るが、そうでなかったらゆっくりとのんびりあきらめないで走るのが、坂道を走るコツである。

走っていれば、体重が落ちれば、筋力がつけば、心肺機能が上がれば、普通に走れるようになるのだから、問題はないのだ。



坂が苦手という人の中には、下り坂が怖いという人もいる。実は、私は下り坂が怖い。

坂道のデブは、位置エネルギーが多い。50㎏の人と100㎏の人では位置エネルギーは倍違う。で、坂道を下り始めるとこの位置エネルギーが解放されるので、両者の速度は同じように上がり、慣性エネルギーはデブは倍の大きさになる。従って、同じように減速するためには、ブレーキに倍の力が必要になるのだ。

ちなみに、下りはデブの方が早いというのはある意味正解である意味不正解である。下り坂から平坦な道につながる場合は、坂の終点での速度は同じだが、何も漕がない場合の到達距離はデブの方が長い。空気抵抗や走行抵抗などを一定とすると倍の距離を走ることができる。運動エネルギーがデブの方が大きいので、抵抗による目減りが同じなら速度の低下が少ないのだ。ところが、下って上って、と言う道の場合は、位置エネルギーから変換された運動エネルギーがまた位置エネルギーに変わるため、理論上は両者の速度は同じで、到達位置も同じになる。実際は抵抗分がデブの方が大きいので、デブの方が遅く、到達位置も低い。

閑話休題

ともかく、減速したり止まるためには大きな力が必要になると言うことは、それだけ自転車に大きな負担がかかり、挙動が不安定になることを意味する。前輪への加重が大きくなり、ブレーキはリニアに効かなくなり下手するとチャタリングが起きる。ハンドルに大きな力がかかり、スムーズにハンドルが切れなくなる。コーナリングによる力で滑りやすくなり、同じ速度で道端の砂に乗ったとき、デブはいともたやすくスリップし転倒してしまうだろう。転倒してしまったら、運動エネルギーが大きく地面との摩擦力も大きいので、ダメージはより大きくなってしまうのだ。

デブのダウンヒルには大きな不安要素があるのだ。極論を言うと、デブは高速ダウンヒルはすべきではないのだ。


そのため、私の下り坂走破速度は急坂になればなるほど落ちる。10キロ台まで落ちる。頂上から麓までブレーキを握りっぱなしなのだ。その結果、手はしびれ感覚がなくなりどの程度の強さで握っているのかがわからなくなってしまう。しびれを取るために手を離すと速度が上がってしまうので、しびれを取ることもできない。


下りは登りよりもキッツイ地獄なのだ


自転車にエンジンブレーキがほしい、リムに発電機を仕込んで発電させてエンジンブレーキにしたい、一定の力でブレーキをかけてくれるような、ブレーキホールド装置がほしい、と、何度思ったかわからない。


山道の下りでは、前後一組のブレーキに命を託している。高額なブレーキを購入するのは自転車を軽くするためではない。きちんとリニアに長時間減速をする減速性能がほしくて買っているのだ。つまり、命の安全を買っているのだ。





デブの坂道では、登りも下りも無理は禁物。のんびり上ってゆっくり下るが鉄則なのだ。登りでペース配分を間違い動けなくなるのも、下りで速度コントロールできず崖下に転落するのも自己責任である。どちらも避けるようにしよう。









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